2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きなダメージを受けた観光業界でも行動制限が緩くなったこともあり、コロナ対策を継続しながら徐々に国内各地の観光客を受け入れています。
そして、アフターコロナで注目されている観光スタイルの一つとして注目されているのが、SDGsの要素を兼ね備えたサステナブルツーリズムです。一部の自治体では、地域の活性化と自然保護などに対応できるよう、サステナブルツーリズム国際認証を取得し、持続可能な観光事業を得られる対策を図っています。
目次
サステナブルツーリズムとは
サステナブルツーリズムとは、直訳すると「持続可能な観光」です。地域の観光事業を活性化しながら、地域の自然環境と住民の生活を守ることを目的とした取り組みを指しています。
サステナブルツーリズムを意識すると得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- 途上国の観光の場合、貧困撲滅と雇用創出につながる。
- 環境税を取り入れている国であれば、観光=自然保護につながる。
- 自然との触れ合いによって、地球環境の問題意識を高められる。
従来の観光の問題点
高度経済成長期のマスツーリズムの進展により、富裕層といったごく一部の楽しみであった観光がより大衆化し、国内外を旅行する人の割合が増えました。そこで問題になったのが、地域の環境汚染と自然破壊などの「負」の影響です。実際にゴミやタバコのポイ捨て、写真撮影などのマナー違反などが問題となりました。
ほかにも一部の観光地でキャパシティ以上の観光客が受け入れられたために、観光バスなどの交通渋滞が増えたことで、地域住民の日常生活に支障が出たといった問題が発生しました。
この教訓から、観光地の自然環境と地域住民に配慮すること。そして、本物の地域文化を体験してもらうことにフォーカスし、地域住民と観光客とが良い関係性を保つことが大切という考えになりつつあります。
注目されている背景について
サステナブルツーリズムが注目されている背景として、SDGs(持続可能な開発目標)が世の中に与える影響が挙げられます。
SDGsでは、17の目標が掲げられていますが、サステナブルツーリズの観点としては、以下のSDGsの目標と親和性が高いと言われています。
目標8「働きがいも経済成長も」
ターゲットの8.9では「2030年までに、雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する」と明記されています。サステナツーリズムの普及によって、観光に関わる仕事をしている方が長期的に働けるようになり、安定した生活も送れるようになることでしょう。そして、観光客が増えることで経済の活性化も期待できます。
目標12「つくる責任つかう責任」
ターゲット12.b.においては、「雇用を創出し、地域の文化や製品を促進する持続可能な観光のための持続可能な開発影響を監視するツールを開発し、実施する」ことを目指し、持続可能な観光が重要であることにフォーカスされています。
目標14「海の豊かさを守ろう」
SDGs目標14.7では「2030年までに、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の経済的利益を増大させる」ための手段の一つとして、観光が挙げられています。サステナブルツーリズムの認知度を上げることで、海洋の生態系および海沿いの観光地の自然保護が期待できます。
国際基準の認証制度が誕生
サステナブルツーリズムの選定のカギとなるのが、認証制度の有無と言われています。2008年に開催された国際自然保護連合「第5回世界自然保護会議」において、GSTC(=Global Sustainable Tourism Council、世界持続可能観光協議会)では、観光における持続可能な取り組み指標を掲げ、これまで幾度か改訂しています。現在は、GSTC Destination Criteria(以下、GSTC-D)を開発し、普及を継続しています。海外の多くの観光地では、GSTC-Dの4つの基準をベースとした取り組みがなされている模様です。
・持続可能な経営
・社会経済への影響
・文化への影響
・環境への影響(資源消費、環境汚染の削減、生物多様性と景観の保全を含む)
近年、日本でも持続可能な観光地の経営手法の導入を推奨する動きが見られています。観光庁では、各地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)が持続可能な観光地マネジメントがする観光指標「日本版持続可能な観光ガイドライン(Japan Sustainable Tourism Standard for Destinations:以下、JSTS-D)」を定めています。
この観光指標によって、感染症対策や文化的建造物の維持管理、マナー違反などの課題対策だけでなく、日本の風土にも配慮した対策が可能です。
最後に
サステナブルツーリズムの概要と普及している社会背景や認証制度について解説しました。認証制度については、GSTC-Dが多く使われており、日本でもGSTC-Dを踏襲したJSTS-Dがあります。ほかの記事でもサステナブルツーリズムの認証について触れているので、ご参考にして下さい。