サステナブルツーリズム – earthexplore

美しい自然と水を守り、持続可能な町を目指すイビサ島サン・アントニ

美しい自然と水を守り、持続可能な町を目指すイビサ島サン・アントニ

※本記事は、株式会社アスエクが運営する「earth sustainability」からの転載記事となります。 サン・アントニ・デ・ポルトマニ(Sant Antoni De Portmany、以下、サン・アントニ)は、スペイン・バレアレス諸島のイビサ島の西に位置する美しい海と自然に囲まれた町です。透き通った海の水、白い砂浜、そして、絶景のサンセットが見れることでも有名なリゾート地で、特に、5月から10月はハイシーズンとなり、イギリスやドイツ、フランス、イタリアなどといった近隣諸国から訪れる人が絶え間なく、絶大な人気を誇っています。 世界が認めるパーティーアイランドとしてもカルト的人気を誇っているイビサ島ですが、2番目に大きな町サン・アントニでは現在大きな変化が訪れています。観光客が増加し続けるオーバーツーリズム、それに伴う騒音やゴミ問題が発生し、深刻な環境破壊が懸念されるようになりました。そこで、美しい自然や水、町の景観を守るために自治体が立ち上がり、再生計画に乗り出しました。 主な活動としては、ナイトライフ目当てのツーリストではなく、家族連れや年齢層の高い観光客を増やすために、昼間のアクティビティやここでしか見れない美しい自然を前面に出し、ナイトクラブやバーなどの深夜営業を行うナイトスポットから、レストランやケータリング施設などへ事業転換させることを目的としています。また、その費用は欧州復興基金「NGEU (Next Generation EU)」から支援されることが決定しており、ナイトスポットが多数点在しているヴァラ・デ・レイ通りはすでに改造工事に着工しています。それ以外にも、投資家やホテルチェーンが多額の予算を投入し、リニューアルし、ラグジュアリー化させるホテルが次々と建設されています。星のグレードをあげることによって、富裕層のゲストを増やしたいといった目的や町の変化に合わせた先行的な動きのようです。 筆者が訪れたのは9月末ですが、すでにハイシーズンも後半に差し掛かっており、観光客はそれほど多くはなく、高齢者や家族連れも目立っていました。パーティー目的の若者で溢れ返っていることを想像していましたが全く違っており、町はとても閑静で、少し行けば大自然が広がっており、空気が澄んでいて、とてもリラックスできる贅沢な環境です。 ツーリストも協力する徹底されたビーチクリーン 特筆すべきは、町にもビーチにもゴミがほとんど落ちていないことです。サン・アントニには、町の中心地から徒歩圏内にいくつかのビーチが点在していますが、ビーチクリーンが徹底しています。どんなに小さなビーチであっても必ず監視員が2、3名常駐しており、遊泳禁止エリアに入る人がいないか、違法行為がないか、ゴミの不法投棄はないかなどチェックしています。また、ビーチの入り口には注意事項が書かれた大きなボードが設置されており、誰でも確認することができます。 ビーチにいる間に目にしたのは、監視員と地元住民と思われる少年が一緒になって、砂浜と海中のゴミ拾いを行っている微笑ましい姿です。ここまで徹底したビーチクリーンを行っていながらも残念ながら100%ゴミがなくなることはなく、魚が泳いでいくのが分かる透き通ったキレイな海の中にも少量のプラスチックゴミが浮かんでいるのを発見してしまいました。しかし、見る限りルールを破っているような人はおらず、設置されているゴミ箱の周りでさえ、キレイに片付けられており、今後は更に改善されていくように感じました。 バイオテクノロジーと海洋植物による自然保護の未来の形 2022年5月にオープンしたばかりの「BIBO PARK Ibiza Botánico Biotecnológico」にも訪れましたが、ここは、最先端技術を取り入れたバイオテクノロジー・ガーデンであり、イビサ島で生息する植物や近隣の島に生息する絶滅危惧種を含む植物の保護に重点を置いている自然保護植物公園です。広大な敷地内には植物だけでなく、自然と住みついたヤモリやカタツムリ、カラフルな蜘蛛などの動物の姿を見ることもできます。 また、同公園では、持続可能な最先端技術を駆使して植物の実用的な応用にも力を入れています。そのひとつが、入り口近くにあるのが藻類を使った光バイオリアクターです。これは、円状に連なった透明のチューブ内で藻類を培養し、発電から炭素隔離まであらゆる用途に利用できる装置です。 また、バルセロナを拠点とするバイオテクノロジー企業「Bioo社」が開発した生物電池「Bioo Panel」も設置されています。Bioo社は、土壌有機物から発電し、農業用センサーに電力を供給するための生物電池を製造しています。生物電池は、生物の機能を利用した電池の総称です。酵素や微生物の生化学的なエネルギーを電気エネルギーに変換することで発電を行います。 IBIZA BIBO PARKでは、有機物から微生物が生み出す電気を集めてバッテリーを充電し、その充電で携帯電話やバッテリーを充電することが出来ます。 Bioo社は、生物から作れる持続可能な電力を大都市に供給することを最終的な目標として掲げています。ますますデジタル化が進み、異論可能性を秘めている生物は絶対に絶やしてはいけない存在となっています。それらが組み合わさったバイオテクノロジーは今後より一層注目を集め、研究と開発が進んでいくことを実感することができました。 実際に装置を見ながら詳しい説明を聞いても専門的な内容が多く、全てを理解するのは難しいですが、ますますデジタル化が進み、異論可能性を秘めている生物は絶対に絶やしてはいけない存在となっています。それらが組み合わさったバイオテクノロジーは今後より一層注目を集め、研究と開発が進んでいくことを実感することができました。 洞窟の中にある水族館で海洋植物が水の汚染を防ぐ もともとは、伝統的なロブスターの洞窟だった場所をそのまま活かした水族館「Aquarium Cap Blanc」にも訪れました。これまで人工的な水族館しか見たことがなかったため、ほとんど自然の力で保たれている天然水族館の存在に驚きました。20世紀初頭、ロブスターは生きたまま洞窟に保存され、養殖場を備えた蒸気船でバルセロナや他都市の市場へ運ばれていた歴史があります。スペイン内戦後に起きた国内外での様々な紛争により、徐々に減少してしまい1940年代半ばには完全に放棄されてしまい、1989年にイビサ島で最初の水族館として利用されるようになりました。 同水族館も海と同様に透き通ったとてもキレイな水が特徴的ですが、5つの入水口が異なる場所に配置されていることから、酸素の循環と水の再生が絶え間なく行われるという画期的な仕組みになっています。他にも海洋植物のポシドニア・オセアニカが水中で草原を形成し、光合成することによって、たくさんの酸素を供給する役割を果たしています。このポシドニア・オセアニカのおかげで、イビサ島近海には約250種以上の生物が生存しているといいますが、水族館にいた魚たちもとても生き生きして、幸せそうにさえ見えました。 「Aquarium Cap Blanc」には、カロ・デ・モロビーチから歩行者専用道を歩いて行くことも可能となっており、その他に、サン・アントニ港から毎日出航しているボートで行くことができます。入り口にはテラス付きの小さなバーがあり、イワシのグリルやサングリアなどのカクテルも味わえます。目の前の海から絶景のサンセットが見えるベストポジションとも言えます。 環境破壊、景観破壊などの問題からナイトライフから昼間のアクティビティ目的のツーリストを増やすプロジェクトに尽力している現在のサン・アントニですが、町の清潔さからすでにパーティーアイランドのイメージはなく、イビサ島に対するステレオタイプは完全に払拭されました。しかし、そこにはリゾート地にとって絶望的なコロナ禍の危機を乗り越え、伝統文化と自然を守りながら新たな観光客を呼び寄せたいといった地元の人々の強い思いと努力によって成功し始めているのです。 ここにしかない美しくて豊富な自然は絶対破壊されてはならない宝物であり、観光客がマナーやルールを守り、町に協力することは何よりも重要なことだと実感しました。 協力: Visit Sant Antoni (https://visit.santantoni.net/en/)

自然を大切にするニュージーランド、旅行者に対し責任ある行動を求める

ニュージーランドは日本と同じ島国です。日本から直行便で約10時間で行くことができます。ニュージーランドには、数多くの固有種が生息するため、同国は入国時に自然環境を保護するための対策を実施しています。本記事は、入国時や観光地で実施されている対策を紹介します。 ニュージーランドの美しさを守る「ティアキ・プロミス」 ニュージーランドは、生物多様性の宝庫と呼ばれるほど、多くの珍しい動植物が生息しています。それらを守るため、ニュージーランドには、「Tiaki Promise(ティアキ・プロミス)」という考え方があります。ティアキとは、ニュージーランドの先住民であるマオリ族の言葉で「人と場所を守る」という意味です。 ティアキ・プロミスは、ニュージーランドを訪れる旅行者に対しても守るよう呼びかけられています。具体的には、以下5つの項目に留意する必要があります。 それぞれの項目について、求められている内容を詳しく紹介します。 自然豊かなニュージーランドでは、ハイキングやバードウォッチングなどの自然や生き物を相手にするアトラクションが多くあります。その際、動物と適切な距離を保つことや野鳥に餌を与えないよう求められています。他にも、ハイキングコースの入口には、靴を洗浄するためのゲートが設けられていたり、フェリー乗り場の近くには、自転車を洗浄するための設備などが設置されています。 ニュージーランド最大の都市・オークランドの街中に設置されているゴミ箱は、どれも分別が行われています。しかし、ハイキングコースやビーチ、国立公園には、ゴミ箱が設置されていません。そのため、自分のゴミは自分で持ち帰ります。もしゴミを見つけた場合は、自分のものでなくても持ち帰るよう呼び掛けています。 ニュージーランドは、日本と同様に左側通行です。私たち日本人は違和感なく運転できるかもしれませんが、欧米は右側通行であるため、国外からの旅行者に対して安全運転を行うよう呼びかけています。また、地図では近距離に見えても、実際には遠かったり、道が細い場合もあります。時間に余裕を持って運転しましょう。 自分自身の身を守るためにも、出かける前の事前準備は重要です。例えば、ニュージーランドの気候はとても変わりやすいです。また、電波の届かない場所へ行く際は、遭難した際やトラブルが発生した際の行動を辿れるよう、携帯会社の無料サービスで事前にスケジュールを共有しておくことも可能です。また、滞在している地域のハザードマップを確認することも重要です。 ニュージーランド国内を旅行すると、先住民族・マオリ族にとって重要なマラエ(集会場)といった建物を目にします。外から覗く分には問題ありませんが、勝手に入ってはいけません。また、仮に招待されたとしても許可なしに撮影を行わず、都度撮影をして良いか確認をしましょう。地方部によっては病院がない場所もあります。そのため、新型コロナウィルスなどの感染症に限らず、体調が悪い時はその地域を訪れないことも重要です。 ティアキ・プロミスは、サステナブルツーリズムにも繋がる考え方のため、ニュージーランド以外の国を旅行する際にも応用できるでしょう。ティアキ・プロミスに関する動画もあるので、気になる方はぜひご覧下さい。 入国時の持ち込み制限について ニュージーランドは、ティアキ・プロミスの考え方を広める以前に、国外の旅行者が入国する際、環境を保全するための取り組みを行っています。同国は、肉製品といった食品だけでなく、アウトドアレジャー・スポーツ用品の持ち込みを禁止しています。 ニュージーランドの第一次産業省(バイオセキュリティー)のウェブサイトを確認すると、ハイキング用の靴やキャンプで使用するテントといったアウトドア用品、ダイビングや釣具、ゴルフ用品、農作業で使用する器具など、一度でも国外で使用されたものの持ち込みを禁止しています。 詳しくは、こちらをご覧ください。 最後に ニュージーランドは、豊かな自然があり、キャンプやハイキングといったアウトドアを楽しむことを目的に訪れる旅行者の多い国です。その自然を守るためにアウトドア用品の持ち込みを規制するという取り組みは、日本であまり聞いたことがなかったため、興味深いと感じました。 日本へ入国する際の持ち込み制限・禁止品は、ニュージーランドほどは厳しくありません。しかし、日本もニュージーランドと同様に島国であり、多くの固有種が存在します。世界文化遺産に登録された富士山では、登山口付近に靴底の土を落とすための場所が設けられるようになりました。このように、場所によっては自然を守るための取り組みが加速しています。 私は、生物多様性の重要性が再認識されている今だからこそ、ニュージーランドのように、入国時に環境保護を目的として、制限を行ってもいいのではないかと感じました。今週末もハイキングへ行く予定ですが、ティアキ・プロミスを守りながら、楽しもうと思います。 参照:https://www.tiakinewzealand.com/https://www.mpi.govt.nz/bring-send-to-nz/bringing-and-posting-items-to-nz/how-to-declare-items-when-arriving-in-nz/

観光をサステナブルに。ツーリズム産業のスタートアップ企業を紹介

ポストコロナの時代の観光は、どのように変化していくのでしょうか?グローバル全体で、自然環境や地域社会に対して配慮し、観光産業を成長させることでより観光地域の企業や地元住民が豊かになることを目指すサステナブルツーリズム(持続可能な観光)への注目が高まっています。本記事は、観光をよりサステナブルに行うために立ち上がったスタートアップ4社を紹介します。 サステナブルツーリズムに関連する記事はこちら サステナブルツーリズムの現状 DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査 2022年度版によると、サステナブルな取り組みを重視する割合は、欧米とアジアの両地域で半数以上を占めています。今後、日本国内でも、観光産業全体でサステナブルな取り組みを推進していくことが求められるでしょう。 欧米豪の旅行者の中でも、高収入層は、サステナブルな取り組みを重視すると答えた人々の割合が、中収入や低収入の旅行者に比べて高いことがわかりました。また、海外旅行先で実施したいサステナブルな取り組みについて選ぶアンケートでは、アジアと欧米豪の両地域ともに「ゴミ削減」が最も多い結果となっています。 アジアの高収入層は「ゴミ削減」だけでなく「宿泊施設におけるアメニティグッズの辞退」の選択率が、中収入や低収入の旅行者に比べて高いです。一方、欧米豪の高所得者層は、「利益の一部を野生動物保護に充てる体験プログラムへの参加」が低所得者層は7%、中所得者層は12%に対し、14%と高く、また「カーボンオフセット商品の利用」を選択する旅行者も、低所得者層は8%、中所得者層は9%に対し、高所得者層は13%となっています。 サステナブルな観光産業に向けて取り組むスタートアップ4選 観光産業でサステナブルな変革を起こすためには、新たなテクノロジーを実装していく必要があります。ここからは、観光産業をよりサステナブルに変革することを目指すスタートアップ企業を3社を紹介します。 NotOnMap NotOnMap(ノット・オン・マップ)は、旅行者とインド国内の農家や職人を繋ぐことを目的に、2012年に設立されたインド発のスタートアップ企業です。同社は、観光地以外の農村地域に旅行客を呼び、農村地域の人々がより良い生計を立てながら、地域文化や遺産を保護し、旅行者には本物の体験を提供することを目指しています。NotOnMapは旅行者に対し、地域の人と同じように生活することを推奨しています。旅行者は、NotOnMapを利用することで、滞在先を見つけられるだけでなく、地域文化を体験することができます。 Jet-Set Offset Jet-Set Offset(ジェットセット・オフセット) は、2019年に設立されたアメリカ発のスタートアップ企業です。旅行は、距離に関係なく移動を伴い、中でも飛行機による移動は、多くの二酸化炭素を排出します。同社は、飛行距離に応じて寄付ができるよう、シンプルなプラットフォームを構築し、サービスを提供しています。Jet-Set Offsetは、旅行者ではなく、企業の人事部門や出張管理部門に対してサービスを提供しています。同社は、企業や組織の従業員が飛行機を利用して出張した際に排出した二酸化炭素を簡単にオフセット出来るよう支援をしています。 Murmuration Murmuration(マーマレーション)は、フランス発のスタートアップ企業です。オーバーツーリズムを回避ためのソリューションを提供しています。オーバーツーリズムとは、旅行者の過度な増加によって引き起こされる問題を指し、具体的には、地域住民の生活やゴミのポイ捨て、環境破壊、他にも土地の魅力を低下させてしまうといった問題を引き起こします。同社は、Flockeoと呼ばれるプラットフォームを提供しており、衛生画像で観光地の旅行客の数を特定します。旅行会社や観光客は、同社から提供されるデータを元に、別の観光地を選択することや時間帯をズラすなど、人混みを避けることができます。そして、結果的にオーバーツーリズムの影響を軽減することが可能になります。 最後に 観光産業は、裾野の広い産業です。そのため、観光産業全体で環境負荷を低減するためには、お土産店から宿泊施設、旅行会社、飛行機やバス、タクシーといった交通機関など、多くのセクターの協力が求められます。 本記事で紹介したスタートアップの事例も、旅行者を対象にしたサービスから企業や組織、旅行会社を対象にしたサービスまで幅広くあります。世界全体で、旅行者の意識が変わりつつある今、観光産業は新しいテクノロジーの技術と共に大きく変化していくでしょう。

日本初のゼロエネルギーホテル!愛媛県にオープンしたITOMACHI HOTEL 0

日本初のゼロエネルギーホテル!愛媛県にオープンしたITOMACHI HOTEL 0

国内外の旅行が活発化しています。ホスピタリティ産業でもサステナビリティの考え方が浸透しつつあります。例えば、フライトやホテルの予約を行うウェブサイトでは、環境配慮や環境負荷がより小さい選択肢が表示される機会が増え、一部のビジネスモデルが変わろうとしています。本記事は、愛媛県西条市にオープンしたゼロエネルギーホテル・ITOMACHI HOTEL 0を紹介します。 「糸プロジェクト」について 糸プロジェクトは、愛媛県西条市に新しく誕生した再生可能エネルギーと地方創生をテーマにした街である「いとまち」に集まる人びとのための参加型プロジェクトです。「いとまち」という名前には、この場所で新たに挑戦する人の未来へのチャンスを「紡ぐ」という意味が込められています。 糸プロジェクトは、「エネルギー」「テクノロジー」「グリーンインフラ」「食」「建築」をキーワードに、遊びやすく暮らしやすい自然溢れる街づくりを目指しており、愛媛県西条市で半導体装置部品などを製造している株式会社アドバンテック(以下、アドバンテック)と建築家の隈研吾氏と東京大学の隈研究室メンバーが主導しています。 いとまちは、住宅ゾーンと商業ゾーンに分かれています。住宅ゾーンには、戸建て住宅が建設され、魅力的な街づくりが行われています。一方、商業ゾーンには、マルシェやレストラン、ホテルが併設されており、地元の名産品や工芸品などを購入することが可能です。 いとまちについて詳しくはこちら 愛媛にオープンしたITOMACHI HOTEL 0 2023年5月27日、いとまちに日本初となるゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL 0」がオープンしました。ITOMACHI HOTEL 0は、アドバンテックとホテルの事業企画及び運営業務を行う株式会社GOODTIMEが共同で運営しています。 アドバンテックは、2021年に「再エネ100宣言RE Action」に参加し、2021年度からグループ全体で使用する電力をすべて再生可能エネルギー由来の電力にすることを宣言しています。糸プロジェクトによって建設された「いとまちマルシェ」やレストランは「ZEB Ready」の認証を取得しています。ZEB Readyは、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物です。 今回新たにオープンしたITOMACHI HOTEL 0は、環境省が定めた最高ランクのZEB認証を日本国内のホテルで初めて取得しました。同ホテルは街区全体でマイクログリッド(小規模電力網)を確立し、災害発生時には3日間で800人分の非常用電源と水と食を提供できる防災拠点としての機能も併せ持っています。 ZEB認証とは、Net Zero Energy Buildingの略称です。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指します。 環境省は、ZEBの実現・普及に向けて、4段階のZEBを定性的及び定量的に定義しています。 ZEBの定義について詳しくはこちら ITOMACHI HOTEL 0の具体的な取り組みとは ITOMACHI HOTEL 0は、宿泊者が日々意識するきっかけが多くないエネルギーというテーマと向き合うきっかけを提供しつつ、食・アート・客室備品・アメニティを通じて愛媛県や西条市の魅力を再発見することができるようになっています。 ITOMACHI HOTEL 0は、床材に木質由来の再生可能なバイオマスを使用し、カウンターなどの天板にはジーンズの端切れを活用した素材を使用するなど、随所に「循環を意識した工夫」を発見することができます。また、同ホテルは、ゼロエネルギーホテルとしてアメニティにもこだわっています。例えば、客室に設置しているベッドは、金属スプリングの入っていない西川のノンコイルマットレスです。このマットレスは、寝心地の快適さは維持しながら、廃棄物排出量を大幅に削減することができます。また、バスアメニティは、根も、葉も、茎も、植物まるごとの生命力を活かしたオーガニックコスメブランド「NEMOHAMO」を導入しています。 他にも、ホテルで提供されるコーヒーや緑茶、ハーブティーは全て愛媛県産です。愛媛県産の商品や農作物を積極的に使用するなど、コンセプトである「0からめぐる愛媛のたのしみ」を体現しています。 最後に 日本でも、環境に配慮していることを謳うホテルや国際基準を満たすサステナブル認証を取得している宿泊施設数は増えています。しかし、温室効果ガス排出を伴うエネルギー消費が実質ゼロのホテルは、今回紹介したITOMACHI HOTEL 0が国内初です。石油や天然ガスの価格高騰の影響で電気代が上がったことで、エネルギーについて考える機会は増えたように感じます。次世代の社会におけるエネルギーや循環社会を考える際は、是非ITOMACHI HOTEL 0に宿泊し、思いを巡らせてはいかがでしょうか。

サステナブルツーリズムのニーズ高まる|ブッキング・ドットコムレポート2023

オンライン旅行予約サービスを提供する大手Booking.com(ブッキング・ドットコム)は、2023年4月に「Sustainable Travel Report 2023」レポートを発表しました。 このレポートは、2023年2月に、日本を含む世界35ヶ国を対象として、サステナブルツーリズム(持続可能な観光)に関する調査を行いました。調査は、過去1年以内に旅行に出かけ、2023年も旅行の予定がある18歳以上の合計3万3000人以上が対象です。 結果からわかるサステナブルツーリズムへの関心の高さ ブッキング・ドットコムが発表したレポートによると、サステナブルな観光に関心があると答えた人の割合は、2022年に行なった調査よりも高く、全体の74%を占めました。(2022年は66%) 今後1年以内に計画している旅行をサステナブルなものにしたいと回答した旅行者が76%に上る一方、物価高騰の影響で予算を見直す必要があると回答した割合も同数に上っています。 サステナブルな観光は、従来の観光よりも金額が高い場合が多いです。レポートでも、サステナブルな観光は旅費が高すぎると回答した旅行者が49%と半数を占めています。しかし、良い未来のためなら金額が高くても構わないと回答した旅行者も43%の割合を占めています。 サステナブルツーリズムの課題は価格以外にも 上図によると、旅行業者に対して、サステナブルな選択肢を増やしてほしいと回答した旅行者は74%で、2022年の66%よりも8%増加しています。また、サステナブルな観光の選択肢が不足していると最も多く回答した旅行者が多い国はタイで70%、一方最も少なかった国はオランダで35%です。 また44%の旅行者が、どこでサステナブルな観光に関する情報を入手すればいいのか分からないと回答しています。訪れた地域の文化を感じることができる本物の体験を求める旅行者が、全体の75%を占める一方、地域に貢献することのできるツアーやアクティビティをどのように見つけたらいいか分からないと答えた旅行者は全体の40%に上っています。 既に行われているサステナブルなアクション 同レポートによると、サステナビリティに対して高い関心を持っている旅行者は、旅行中もサステナブルな行動を行っていることが分かりました。例えば、客室を利用していない時はエアコンを消すと答えた割合は全体の67%で、2022年と比較して29%増加しています。また、タオルを繰り返し使う旅行者の割合も全体の60%で、2022年と比較して25%の増加です。他にも、繰り返し使用することのできるマイボトルを持参する旅行者は全体の60%、不必要な電気を消すなどの省エネ対策を行う旅行者は全体の77%、ゴミの分別をきちんと行う旅行者の割合は全体の45%、そして部屋の毎日清掃を断る旅行者の割合は全体の40%と、全体的に2022年よりも観光客のサステナビリティに対する関心が高まっていることが分かります。 交通手段についても同様です。フランスでは、鉄道で2時間半以内の移動が可能な都市間の航空機利用を禁止する法律が成立しました。今後、フランスに限らず、旅行の移動手段は、環境負荷の小さい方法を取ることが主流になるかもしれません。その動きは、既に始まっています。全体の43%の旅行者が、飛行機や自動車といった二酸化炭素を排出する交通手段ではなく、徒歩や自転車、公共交通機関での観光を予定していると回答しています。 また、混雑を避けてオフシーズンに観光することを計画している旅行者の割合は、全体の43%です。オフシーズンに観光することは、旅行者の増加によって引き起こされる地域住民の生活や自然環境に対してマイナスな影響を与えるオーバーツーリズムの緩和に繋がります。 第三者認証による透明性の確保が求められる時代へ 旅行者のサステナビリティに対する意識は、年々高まっています。ブッキングドットコムのレポートでは、全体の65%の旅行者が、自分が宿泊する施設が第三者機関によるサステナブル認証やラベルを取得していると安心して利用できると回答しています。そして、今後旅行を計画する際、サステナブル認証の取得有無を検索条件にしたいと回答した旅行者は、59%と半数を占めます。 一方で、全体の39%の旅行者は、旅行会社がサステナブルだと謳うツアーや宿泊施設といった選択肢が本当にサステナブルかどうかは疑わしいと回答しています。今後、観光産業全体で観光客の信頼を獲得していく必要性が明らかになりました。 最後に 2023年2月、筆者はアムステルダムとベルリンのホテルに滞在しました。その際、タオルを繰り返し利用する取り組みや部屋の清掃を断る取り組みは、既に当たり前のように行われていました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。 日本政府観光局のデータによると、日本を訪れる外国人観光客の数は、2022年6月以降増加傾向にあり、今後も増えることが予想されます。ブッキング・ドットコムが発表した今回のレポートは、35ヵ国を対象としたものでグローバル全体の動きを反映したものではありません。 しかし、透明性の高く、信頼できるサステナブルな選択肢を用意することや第三者認証を取得することは、環境配慮に関心のない旅行者だけでなく、配慮したいと考える旅行者に対しても、日本で満足度高い滞在をして貰うために必要となるでしょう。 今回紹介したレポートの全文はこちらをご覧ください。

観光産業が「持続可能な観光」に取り組むべき理由とは?

「持続可能な〜」という言葉を目にする機会は増えていませんか。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、これまでとは違った生活様式を数年実践したことで、人々の価値観は大きく変化し始めています。変化している価値観のキーワードの1つが、「持続可能な〜」です。環境や社会的負荷を軽減し、持続可能なビジネスモデルへ変容する動きは、観光産業でも見られます。 目次 サステナブルツーリズムにおけるヨーロッパの傾向 サステナブルツーリズムのスタートは途上国 旅行者も観光産業も「消費型」から「量より質」へ 持続可能な観光を目指すならJSTS-Dがおすすめ 最後に サステナブルツーリズムにおけるヨーロッパの傾向 サステナブルな価値観やライフスタイルが定着しつつあるヨーロッパの旅行者は、以下のような傾向が見られるようになりました。 宿泊施設を選ぶ際は料金だけでなく、自然エネルギーの電力を使用しているか確認する。 アメニティや食材は環境に配慮しているかどうか調べる。 宿泊施設は、オーガニック認証や国際フェアトレード認証を取得しているかどうか確認する。 移動は電気自動車や電動バイクなど、CO2排出量を削減できる選択肢があるかどうか確認する。 つまり、ヨーロッパの旅行者の一部は、地球環境や人権配慮を考慮したモノやサービス選びを重視し始めています。 サステナブルツーリズムのスタートは途上国 サステナブルツーリズムの先駆けは、エコツーリズムです。エコツーリズムをいち早く採り入れた場所は、アフリカなどを中心とした途上国でした。いずれの国や地域も、手付かずの大自然が多く残っています。自然保護と併行して、密猟や森林伐採をすることで収益化し、長期化する貧困問題の解決や雇用を生み出す取り組みを行っていました。このような取り組みが、環境や社会問題への意識が高いヨーロッパの旅行者たちに評価され、徐々にサステナブルツーリズムとして定着するようになっています。 旅行者も観光産業も「消費型」から「量より質」へ 新型コロナウイルス感染拡大前(※2019年以前)、日本国内では都市部や地方を問わず、多くのインバウンド観光客で賑わっていました。たくさんモノを買い込み、観光を余すところなく楽しむといったインバウンド観光客を皆さんも見かけたことがあることでしょう。インバウンド需要によって業績アップした施設や店舗もあったでしょう。一方で、文化や常識の違いなどで、ゴミ捨てのマナーや騒音などの新たな問題が発生しました。 新型コロナウイルス感染拡大のタイミングが、SDGsを意識したライフスタイルが浸透しつつある時期と相まって、観光産業も「エコ」や「持続可能」をコンセプトとした取り組みにシフトチェンジしています。例えば、地域の文化と自然を守ることや地域経済の発展にフォーカスし、量ではなく質を重視したツーリズムを再構築する動きが活発化しています。 持続可能な観光を目指すならJSTS-Dがおすすめ 観光産業がサステナブルツーリズムに取り組むメリットは、地域文化と環境問題に配慮することで観光地の地域住民と良い関係を継続的に構築出来る点です。また、観光産業は、多くの雇用を生み出し、地域経済に貢献します。 本来観光産業の発展は、喜ばしいことです。しかし、従来型の観光ビジネスモデルを持続可能な形へと変化させる必要があります。 観光産業が、サステナブルツーリズムを目指す近道は、集客の前に観光地に住む方や働く方が満足できる街づくりをすることです。街づくりという土台作りからスタートします。取り組みの第一歩として挙げられるのが、観光地の現状がどうなっているか調べ、分析することです。地域の課題点を洗い出し、どのような手段を取れば解決できるかを知見のある方を交えて取り組むと新しいアイデアが思い浮かぶかもしれません。 サステナブルツーリズムに取り組む場合、観光庁が策定した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」の活用をお勧めします。​​持続可能な観光を推進する際に、地方、自治体や観光地域づくり法人(DMO)が、持続可能な観光地のマネジメントの導入を検討する際の参考情報となります。 JSTS-D 引用:JSTS-D 関連記事▼ 国際基準GSTCとは?日本でも広がるサステナブルツーリズム – あすてな 最後に 空港の水際対策が緩和されたことにより、日本国外からのフライト数が徐々に増え、訪日外国人観光客が、再度日本を訪れるようになりました。 観光産業が「持続可能な観光」に取り組むべき理由とは?

「持続可能な〜」という言葉を目にする機会は増えていませんか。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、これまでとは違った生活様式を数年実践したことで、人々の価値観は大きく変化し始めています。変化している価値観のキーワードの1つが、「持続可能な〜」です。環境や社会的負荷を軽減し、持続可能なビジネスモデルへ変容する動きは、観光産業でも見られます。 目次 サステナブルツーリズムにおけるヨーロッパの傾向 サステナブルな価値観やライフスタイルが定着しつつあるヨーロッパの旅行者は、以下のような傾向が見られるようになりました。 つまり、ヨーロッパの旅行者の一部は、地球環境や人権配慮を考慮したモノやサービス選びを重視し始めています。 サステナブルツーリズムのスタートは途上国 サステナブルツーリズムの先駆けは、エコツーリズムです。エコツーリズムをいち早く採り入れた場所は、アフリカなどを中心とした途上国でした。いずれの国や地域も、手付かずの大自然が多く残っています。自然保護と併行して、密猟や森林伐採をすることで収益化し、長期化する貧困問題の解決や雇用を生み出す取り組みを行っていました。このような取り組みが、環境や社会問題への意識が高いヨーロッパの旅行者たちに評価され、徐々にサステナブルツーリズムとして定着するようになっています。 旅行者も観光産業も「消費型」から「量より質」へ 新型コロナウイルス感染拡大前(※2019年以前)、日本国内では都市部や地方を問わず、多くのインバウンド観光客で賑わっていました。たくさんモノを買い込み、観光を余すところなく楽しむといったインバウンド観光客を皆さんも見かけたことがあることでしょう。インバウンド需要によって業績アップした施設や店舗もあったでしょう。一方で、文化や常識の違いなどで、ゴミ捨てのマナーや騒音などの新たな問題が発生しました。 新型コロナウイルス感染拡大のタイミングが、SDGsを意識したライフスタイルが浸透しつつある時期と相まって、観光産業も「エコ」や「持続可能」をコンセプトとした取り組みにシフトチェンジしています。例えば、地域の文化と自然を守ることや地域経済の発展にフォーカスし、量ではなく質を重視したツーリズムを再構築する動きが活発化しています。 持続可能な観光を目指すならJSTS-Dがおすすめ 観光産業がサステナブルツーリズムに取り組むメリットは、地域文化と環境問題に配慮することで観光地の地域住民と良い関係を継続的に構築出来る点です。また、観光産業は、多くの雇用を生み出し、地域経済に貢献します。 本来観光産業の発展は、喜ばしいことです。しかし、従来型の観光ビジネスモデルを持続可能な形へと変化させる必要があります。 観光産業が、サステナブルツーリズムを目指す近道は、集客の前に観光地に住む方や働く方が満足できる街づくりをすることです。街づくりという土台作りからスタートします。取り組みの第一歩として挙げられるのが、観光地の現状がどうなっているか調べ、分析することです。地域の課題点を洗い出し、どのような手段を取れば解決できるかを知見のある方を交えて取り組むと新しいアイデアが思い浮かぶかもしれません。 サステナブルツーリズムに取り組む場合、観光庁が策定した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」の活用をお勧めします。​​持続可能な観光を推進する際に、地方、自治体や観光地域づくり法人(DMO)が、持続可能な観光地のマネジメントの導入を検討する際の参考情報となります。 関連記事▼国際基準GSTCとは?日本でも広がるサステナブルツーリズム – あすてな 最後に 空港の水際対策が緩和されたことにより、日本国外からのフライト数が徐々に増え、訪日外国人観光客が、再度日本を訪れるようになりました。 日本は、元々おもてなしや文化などで海外からも高く評価された経緯もあり、日本政策投資銀行と日本交通公社が共同で実施したアンケートによると、コロナ収束後に訪れたい国として「日本」が一位という結果も出ています。ツアー会社・旅行者・観光地の住民や従業員が一丸となって、「持続可能な観光」を意識した取り組みを実施し、日本の魅力を国内外に発信し続けることで、日本は観光立国を目指す事が出来ます。

サステナブルツーリズム実践の具体的な一歩、宿泊業者や旅行会社は何をするの?

サステナブルツーリズム実践の具体的な一歩、宿泊業者や旅行会社は何をするの?

近年、教育機関、自治体や企業を中心にSDGsに対する取り組みが盛んです。観光産業も環境や社会を意識した取り組みを始め、観光地本来の美しい姿、風景や文化を持続的に維持する「サステナブルツーリズム」が注目されています。実際に宿泊業者やツアー会社、観光地域がサステナブルツーリズムを取り入れる場合、どのようなアクションが必要なのでしょうか。事例を交えて解説します。 目次 サステナブルツーリズムとは? サステナブルツーリズムは、観光地の経済成長、文化の継承や環境の保全に配慮した「持続可能な観光」を指します。観光客が旅行先で観光を楽しむだけではなく、その地域に住む(働く)人たちの生活が豊かになることも考えられている点が特筆すべき点です。 サステナブルツーリズムは、地域全体で取り組む事例もあれば、宿泊施設のプランとして取り組む場合もあります。こちらの関連記事は、与論島とニセコの地域としての取り組みを解説しています。 関連記事▼持続可能な観光地トップ100選に選ばれた、与論島とニセコの2事例紹介国際基準GSTCとは?日本でも広がるサステナブルツーリズム – あすてな 兵庫県 春陽荘(淡路島)と豊岡市の取り組み 兵庫県は、2022年10月の新観光戦略推進会議で、観光地の経済的利益の還元、文化・環境の維持および保全を通して、持続可能な観光地域を目指すことを軸とした「ひょうご新観光戦略」を発表しました。以下は、兵庫県のサステナブルツーリズムの具体的な取組事例です。 淡路島/春陽荘淡路島にある一棟貸の宿泊施設「春陽荘」では、有形文化財の保護とともに、地域に根づく無形文化を継承する目的として、地域住民による人形浄瑠璃や琴などを発表する場を設けています。 また、脱プラスチックへの取り組みの一環として、無償のアメニティグッズの全廃、竹製歯ブラシや石鹸歯磨き粉を有償で提供します。そして、客室のゴミ箱は「もえるゴミ・もえないゴミ・コンポスト」と3つに分かれており、宿泊客自身が分別し、ゴミを捨てます。 豊岡市兵庫県豊岡市は、「持続可能な観光地 世界トップ100選2021」に選ばれた自治体です。日本から絶滅してしまったコウノトリの野生復興を知ってもらえるよう、地域の文化を学びながらコウノトリにとって最適な生息環境を考えるツーリズムを展開しています。他にも、コウノトリを育むために農薬を使わない農法を編み出し、地域の環境保全にも貢献しています。また、若者の農業への関心度を高める対策によって、地域の環境・社会・経済面の活性化に繋げています。 石垣島の取り組み 石垣島では、ダイビングやシュノーケリングなどを通して、海の環境と未来を考えるサステナブルツーリズムを実施しています。ダイビングやシュノーケリングをすることによって、水中にあるビニールやプラスチックといった海洋ゴミの掃除や、絶滅の危機に瀕しているサンゴ礁の植え付けなどができ、海の環境保全活動につながる見込みがあります。また、海岸でもプラスチックゴミを回収する清掃活動にも積極的です。 軽井沢の事例  今も昔も人気の観光地・軽井沢では、星のや軽井沢のサステナブルツーリズムの取り組みが注目されています。過去から取り組んでいた環境経営をベースに、ごみ資源化100%を目指すゼロエミッションや自然エネルギー発電の活用などに取り組んでいます。 サステナブルツーリズムを推すときに実践したいポイント サステナブルツーリズムを推していきたい場合、普段の生活や仕事で実践するポイントがあります。ここでは3つの事項について触れていきましょう。 自社のサービスや商品の「サステナブル」な視点を意識する旅行プランの場合、似たり寄ったりのプランが複数存在します。例えば、京都であれば神社や仏閣のツアーが数えきれないほどありますので、伏見稲荷大社から二条城までの交通手段を自動車でなく、鉄道や歩きの部分を多めに入れることでCO2削減に結びつくことができます。この部分を訴求しておくと旅行を選ぶ方にとって「サステナブル」であることが伝わります。 企業全体で「サステナブル」な取り組みを考える普段の業務におけるサステナブルな取り組みの主な事例は、オフィスのエアコンの設定温度を見直すことです。人によって暑い寒いの肌感は異なるので、エアコンの温度調整はしづらいかもしれません。とはいえ、エアコンの消費電力量を減らすために、エアコンの室内設定温度を調整するなど、地球環境に対する負荷を考えることは大切です。他にも自宅で完結する業務であれば、通勤日数を週2回を奨励し、なるべく移動のコストをかけないエコな取り組みもサステナブルにつながります。 取引先や関係者に「サステナブル」な取り組みを発信・共有する近年、企業のサステナブルな取り組みは、第三者が注目している場合も多いです。企業方針やバリューと一緒にサステナブルな取り組みを、取引先や関係者にアピールしておくと関心を持ってくれることもあるかもしれません。お互いのポリシーや価値観がマッチしていれば、コラボレーション(または協働)という形でサステナブルに紐づいたビジネスが進む可能性もあります。 最後に 旅行を計画している方は、関心のある地域や宿泊施設には、どのようなサステナブルツーリズムのツアーやメニューがあるか、地域や宿泊施設が直接運営しているウェブサイトを確認してみてください。旅行のまとめサイトでは、あまり紹介されていないサステナビリティに関わる有益な情報を得られるかもしれません。 参照:春陽荘コウノトリツーリズム(エコツーリズム)|豊岡市公式ウェブサイト「持続可能な観光地 世界トップ100選2021」に豊岡市が選出されましたポリシー | サスティナビリティ | 星野リゾート・リート投資法人

サステナブルツーリズムで欧米豪のインバウンド誘致を引き寄せるポイント

サステナブルツーリズムで欧米豪のインバウンド誘致を引き寄せるポイント

観光は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた産業の一つです。国際線の大幅な減少、および運行停止により、海外からの訪日外国人客数は減りました。2022年10月11日、日本政府が、査証免除措置の適用を再開し、1日あたりの入国者総数に制限を設けない(※発表前は 50,000人/1日を目途としていた)、いわゆる水際対策措置の見直しを発表してから、再び海外からの訪日外国人客数が増えています。 目次 海外からインバウンドが戻りつつある 日本政府観光局(JNTO)が2022年12月21日に発表した、2022年11月の訪日外国人数(※推計値)は93万4,500人という結果となりました。以下のグラフでも分かる通り、水際対策の撤廃によって訪日外国人観光客の受入が容易になりました。入国ビザの免除措置の再開によって、訪日外国人観光客数が再び増えていることが分かります。特に東アジアの来訪数が増えているのが特筆すべき点といえるでしょう。 日本はアンケートで「行きたい国ランキング1位」を取得 日本は、外国人が行ってみたい国と挙げる国の1つです。2022年6月に、アジアおよび欧米豪12地域を対象としたアンケート「DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 2022年度版」で、日本は「行きたい国1位」という結果となりました。 以下のグラフを見てもわかる通り、2019年度以降の定期的なアンケートでも日本は連続して「行きたい国1位」となっています。海外の日本の人気は安定しているものといえるでしょう。 欧米豪のインバウンドが意識していることをチェックする 欧米豪を中心とした若い世代は、日頃からサステナブルなライフスタイルを心がけているといわれています。彼、彼女らは、滞在期間や観光費用のことだけでなく、旅行会社・宿泊先・交通機関・滞在スポットのサステナビリティに対する取り組みを、事前にウェブサイトで確認を行う傾向があります。例えば、宿泊費が大きく変わらない場合は、館内の照明がLEDを使用しているか、歯磨きなどのアメニティが環境保護に配慮しているかといったことも宿泊先を選ぶ基準となっています。 しかしながら、日本の国内旅行事業会社のウェブサイトでは、欧米豪からの観光客が求めている「サステナビリティ」「SDGs」「エコラベル」などの情報が、英語などの多言語で公表されていない場合があります。このような不十分な対応も相まって、日本が旅行したい国の選択肢から外れることが、将来起きるかもしれません。その為、まずはサステナビリティにまつわる情報を英語で発信することが大切でしょう。 グーグルトラベルのエコ認定を知っておく グーグルトラベルでホテルを検索すると、サステナビリティに注力する宿泊施設には「エコ認定」のラベルが付けられます。この認定があるとインバウンド観光客にも注目され、誘致がしやすくなるでしょう。グーグルトラベルのエコ認定は、第三者認定機関が指定するサステナビリティの基準を満たすホテルに付与され、また以下の 4 つのカテゴリによる環境への影響に焦点を当てて評価を行っています。 この4項目の詳細については、グーグル公式のサステナビリティに関する取り組みを追加する – Hotel Center ヘルプ「サステナビリティに関する取り組みと定義」の項目で確認できます。 サステナブルツーリズムの認証取得の重要性 欧米豪からの観光客は、旅行先や宿泊先を決めるときにサステナブル認証の取得有無を確認する場合があります。サステナブル認証には、前述したグーグルトラベルのエコ認定の第三者認証機関としても認定されている、BREEAMやEarthCheck、Green Keyなどがあります。 ホテルの部屋がきれい、かつアメニティグッズが充実していても、サステナブルな取り組みが不十分な場合、滞在先として除外するというケースもあるそうです。逆に年数が経過している宿泊施設でも、環境に配慮した優しいルームクリーニングや、最低限のアメニティの提供などの対応をしていれば、宿泊したい人が増えるというケースもあります。 英語で情報発信を行うことも重要です。しかし、今後は、観光客にとって一目で理解できるサステナブルツーリズムの認証を取得することも重要な取り組みになるでしょう。 関連記事▼サステナブルツーリズム 認証機関|事例 – あすてな 最後に 今後は、宿泊施設やツアー提供者だけでなく、お土産業界や飲食店、交通機関、美術館といった公共施設などもサステナブルツーリズムの対象になる可能性があります。インバウンド観光客が増えることを想定し、サステナビリティ対策に取り組み、前もって情報を発信しておくと、集客がしやすくなります。取り組んでいる内容を今一度見直し、サステナブルツーリズムの実現につなげていきましょう。 参照:新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置について (METI/経済産業省)日本政府観光局(JNTO) – Japan National Tourism Organization

オランダとドイツのホテルは「環境」と「多様性の許容」に配慮されている

オランダとドイツのホテルは「環境」と「多様性の許容」に配慮されている

日本のホテルでは、シーツ交換の頻度削減やシャンプーなどのアメニティをフロントで選ぶシステムが導入されるなど、環境配慮に対する取り組みが行われています。しかし、サステナビリティ先進国と言われるオランダやドイツのホテルは、「環境」だけでなく「多様性」にも配慮したサービス提供が行われています。 本記事では、私が2023年2月にオランダとドイツのホテルに滞在した際に感じたことや日本でも取り組めるのではないかと思った点について紹介します。 目次 部屋の清掃や交換は、本当に必要? ホテルに滞在すると、定期的に部屋の清掃が行われます。部屋の清掃は、多くの場合、掃除機やゴミの回収だけでなく、バスタオルやフェイスタオル、ベッドシーツの交換などが含まれます。日本人は、衛生意識が高いため、清掃の度に多くのアメニティを交換します。しかし、サステナビリティへの取り組みを積極的に行い始めているアパホテルは、4泊毎にフル清掃が行われ、3泊までは、同じシーツや枕カバーを使用してベッドメイキングを行っています。宿泊者が希望する場合は、フル清掃を行うことも可能ですが、交換しない場合は、感謝の気持ちとしてミネラルウォーターが配布されます。 一方、オランダとドイツで宿泊したホテルは、シーツや枕カバーの交換は1週間に1度のみ行われます。また、タオル類に関しても同様です。バスルームには、以下のようなメッセージが掲げられています。 宿泊者に対して、本当にタオルの交換が必要なのかを問いかけています。この表示が目に入ることで、タオルの交換頻度は低くなるように感じます。先ほど紹介した日本のアパホテルは、清掃を行わない代わりにミネラルウォーターの配布といったインセンティブがありますが、欧州のホテルではほとんど見かけません。 ホテルで感じる多様性の許容 オランダのホームパーティーでは、全ての人が食事を楽しめるよう、必ずヴィーガンメニューが用意されるそうです。ヴィーガンは、日本語で完全菜食主義という言葉に訳されるため、食事に関するものだと思っている方が多いかもしれません。しかし、ヴィーガンとは、動物から搾取しないというライフスタイル全般に関する思想です。オランダのホテルでは、部屋に用意されているハンドソープやシャンプーといったアメニティーが、ヴィーガン認証を取得しています。 さらに、オランダで宿泊したホテルは、大手宿泊予約サイトのbooking.comによる「Proud Certified」の認定を取得しています。Booking.comによると、LGBTQ+の旅行者の半数以上が滞在先で歓迎されていないと感じたり、不快な思いをしたことがあるそうです。ホテルは、booking.comの「Proud Certified」に認定されると「Travel Proud」のラベルを表示することが可能です。この取り組みは、世界で初めて同性婚を認め、多様性の許容を重視している同国ならではの配慮だと感じました。 Travel Proudについて詳しくはこちら▼ オランダだけでなく、ドイツのホテルでも、「環境」や「多様性」に対する配慮を感じることができます。ドイツで宿泊したホテルの部屋に用意されているお茶は、フェアトレードとオーガニックの認証を取得したものが置かれています。ドイツは、駅の中にオーガニックのスーパーマーケットがあるほど、オーガニック商品が身近です。オーガニックは、農薬を使用しないため、土壌や水を汚染せず、また働く人の健康を守ることにも繋がります。 最後に オランダとドイツのホテルのサステナビリティに対する取り組み事例を紹介しましたが、日本の方が取り組みが進んでいると感じた点もあります。例えば、日本のホテルは、部屋のカードキーを挿入することで、宿泊者が部屋にいることを認識します。これによって、部屋の電気やエアコンの電源が付く仕組みを導入しているホテルが多いです。この取り組みは、部屋に居ない場合、電力消費量の削減に繋がります。今回滞在したオランダとドイツのホテルは、部屋にいない間もエアコンや部屋の電気を付けっぱなしにすることができてしまうため、環境に対する意識が低い宿泊者が泊まった場合、エネルギーを無駄に消費してしまうと感じました。 訪日外国人観光客数は、新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたことで回復しつつあります。環境に対する意識が高い欧米の観光客は、観光地を訪れる前に自分が宿泊する施設や利用するツアー会社が、サステナビリティに取り組んでいるかを確認しています。そのため、サステナブルツーリズムが、欧米の外国人を誘致する方法として注目されています。 サステナブルツーリズムの関連記事はこちら▼ サステナブルツーリズムは、「環境」というテーマに目が行きがちです。しかし、大切なことは、全ての旅行者が快適に過ごせることではないでしょうか?日本の観光産業でも、オランダとドイツの事例を参考に、「環境」と「多様性」の両方に対する配慮が進んでいくことを願います。 参照:https://www.apahotel.com/file.jsp?id=153950#https://www.hotel2stay.nl/

アムステルダム市内を巡る!サステナブルで住民目線な自転車ツアー

アムステルダム市内を巡る!サステナブルで住民目線な自転車ツアー

人口よりも自転車の方が多いと言われるアムステルダムで、自転車のシティーツアーに参加しました。ツアーは、休憩を含めて合計3時間、アムステルダムの中心部をぐるっと一周し、合計15キロ程度移動しました。街や建物、歴史だけでなく、気候変動によって直面している問題についても知ることができました。 サステナブルツーリズムの観点からも、自転車での観光が注目を集めており「サイクルツーリズム」と呼ばれています。自転車は、ガソリン車とは異なり、どれだけ走っても二酸化炭素や温室効果ガスを排出することはありません。また、スピードを落として移動すると、バスや電車では見ることの出来ない街の風景や人々の日常を垣間見ることができるなどのメリットがあり、日本国内でも広がりつつあります。 風速8メートルの逆風を行く 冬のアムステルダムは、曇りがちで風が強いです。あまりの強風で停めていた自転車が倒れるほどでした。ツアー開始前に「すごい強風ですね」と言うと「リアルなアムステルダムが体験できるね」とガイドは答えてくれました。また、ツアーの開始前には、安全のため、右後ろについて来るように言われました。(アムステルダムは右側通行のため、左側で追い越します。)しかし、あまりの強風で私は前に進めず、気が付いたらガイドと25メートルほど距離が離れてしまいました。坂道では、自転車を降りて引く私を横目に、現地の方々は風をものともせず進んでいました。 オランダといえば、風車を思い浮かべる方も多いと思います。この日見た風車は、残念ながら回っていませんでしたが、強い風が吹くからこそ、風車と共に繁栄した歴史があるのだと感じました。オランダの風車には2種類あります。1つは水を汲み上げるため、もう1つは産業のため(小麦などの穀類を粉に挽くため)に利用されてきました。風車は、風を大きく受けるために高い位置に設置されています。 植民地支配していたアジアの文化 私は、AmsterBike社主催のツアーに参加しました。スタート地点は、アムステルダム中央駅の近くです。まずは西の方へ向かいます。その途中で、オランダが植民地として支配していたインドネシアを彷彿とさせるデザインの建物が目に入ります。 ガイドに「オランダのおすすめの料理は?」と質問すると、「インドネシア料理」と返ってくるほど、インドネシアの影響を建物だけでなく食文化に関しても受けていることが分かります。 建物は壊さずに再活用する 日本では、新たに建物を建てる場合、現存する建物を一度解体することが一般的です。しかし、アムステルダムでは、外観を適切にメンテナンスし、内装を変えることで、建物を壊さずに活用しているケースが多いそうです。例えば、穀物倉庫として使われていた建物が、今はマンションとなっています。 また、アムステルダムは、ダムでせき止められた泥炭の上に建てられた街のため、地盤がとても柔らかいです。その為、建物の下には、建物を安定させるために砂と長い木の杭が打ち込まれています。地盤の柔らかいアムステルダムでは、多くの建物が木造建築です。オランダは、国土面積が小さく、建築に必要な木材を調達する十分な森林がありません。同国は、昔から多くの木材をドイツやスウェーデンなどの近隣国に依存してきました。木材は、決して安価な素材ではありません。しかし、耐久性があり、内装を変える際にも取り外しやリサイクルのし易さから、最も扱いやすい素材として重宝されています。 こちらの建物は、少し前方に傾いています。原因は、下に打ち込まれた杭の劣化や地盤沈下です。これらの建物は、一見石造りの家のように見えますが、中は木造です。外側の石は、ハサミのような形をしている金属製の金具で内側の木に打ち込まれています。 さらに、家の上部には、フックのような金具が付いています。アムステルダムの古い家では、空間を可能な限り有効活用するため、階段の幅はとても狭いそうです。その結果、人々は、フックに車輪をつけて物を持ち上げるようになり、今でもフックを利用した物の持ち運びは行われています。ガイドは、「アムステルダムでは、力持ちの友達がいれば引っ越しが出来るよ」と冗談混じりに話していました。 こちらは、日本でも目にするアオサギです。ガイド曰く「本来は水辺にいるはずなのにここにいるということは、誰かが餌を与えているんだ」と教えてくれました。アムステルダムには、野良猫ならぬ、野良アオサギがいます。 気候変動によって起こっていること 気候変動によって引き起こされる物理的被害は、国や地域によって異なります。日本では、大型台風の上陸や大雨による洪水で地滑りや堤防の決壊といった被害の頻度が増えています。オランダは、国土の4分の1が海抜0メートルの低地です。地球温暖化によって海面が上昇すると街が浸水してしまいます。オランダ政府は、浸水対策として防波堤の設置を進めていますが、同国が抱えている問題は、それだけではありません。 オランダでは、2019年頃から夏の過去最高気温を連続で更新しています。アムステルダムの建物の下には、長い木の杭が打たれていますが、乾燥や暑さで水が蒸発すると杭が水から出てしまいます。その結果、杭の劣化が早まってしまうという問題に直面しています。また、冬は気温が下がる地域のため、オランダの多くの家屋は、光を多く取り込み、光から熱を吸収し、部屋を温めるために大きな窓を設置しています。しかし、夏場の気温が高くなると、熱が部屋に篭ってしまいます。冬場に部屋を温めるための大きな窓が、夏場では逆の効果を発揮してしまっています。 自転車は理にかなっている アムステルダムの至る所で目にする自転車ですが、昔は多くの自動車が、旧市内を走っていました。便利になった一方で、自動車による交通事故で多くの市民の命が奪われたため、安全なサイクリング環境を求める社会活動が起こりました。 自転車はアムステルダムの土地にも合った移動手段です。街歩きをすると分かりますが、道幅が狭いため、自動車が一台止まると、後続車が低速で進んだりすぐに止まったりを繰り返し、渋滞が発生してしまいます。その為、アムステルダムの人々は、宅配の荷物やウーバーで注文した食事が指定の時間より遅れても、穏やかに待てるそうです。 市民社会を中心に自動車の排気ガスによる大気汚染や騒音、駐車による狭い道路の占領といった問題に対する声が大きく上げられるようになりました。アムステルダムでは、自動車を減らす取り組みが進められ、2030年から市内でガソリン車やディーゼル車の走行は禁止することが決定されています。また、新たに建てられるマンションやビルには、基本的に自動車のためだけの専用駐車場を建設できません。さらに、自転車優先の道路整備や自動車用の道路の道幅を狭めることで、速度を抑制する取り組みなどを行っています。他にも、地下に駐車場を設置することで駐車による道路といった場所の占領を無くしています。 運河の街アムステルダム特有の課題 アムステルダムには、無数の運河があります。運河には、ハウスボートが停泊しており、船内で生活をしている市民もいます。アムステルダムらしい、とても素敵な風景のように思えますが、実はプライバシーのために道端に植物を植えてしまう人やフェンスを設置してしまう人が後を立たず、市と住民のイタチごっこになっています。 ツアーの最後は、オランダ名物のストロープワッフルを頂きました。薄いワッフル生地の間には、甘いシロップが挟んであり、疲れた身体に甘さが沁みました。 最後に ツアーを通じて、街づくりだけでなく、アムステルダム市民の考え方についても触れることができました。アムステルダムの市民が多様な価値観に寛容な背景には、これまでの歴史が関係しているのだと知りました。オランダは、アムステルダムやヨーロッパ最大の港であるロッテルダムがあったことから、貿易や金融の中心地として、多様な価値観を受け入れる寛容さを持ち合わせています。現在のオランダの国づくりにもその寛容さが反映されており、オランダは世界で初めて同性婚を認めた国でもあります。 また、アムステルダムは、市政にドーナツエコノミーの概念を導入しています。同市は、市民との対話を大切にしながら、地域の人々が幸せに生活するための取り組みを今後も推進していくのだろうと思います。 日本は、オランダと同様、国土面積は大きくありません。また、エネルギーや食料資源を海外からの輸入に依存している点も似ています。オランダ人には、倹約家な人が多いと言われています。その国民性も相まって、街の中で見る建物やホテルのサービス一つとっても「本当に必要なのか」という考え方が根本にあるように感じます。この考え方は、ぜひ日本でも広まって欲しいです。 最後に、ガイドが、サステナビリティに関して話していた言葉が印象に残っています。「サステナビリティとは、全ての人を包み込む、インクルージョンの要素も大切だと私は思ってます。アムステルダムの街並みは美しいですが、車椅子を利用している人にとっては不便かもしれません。私は、アムステルダムが歴史的にも色んな人を受け入れてきたように、インクルーシブな街になってほしいと思っています」この言葉は、地球の繁栄を目指す「ドーナツエコノミー」を市政に取り組んでいるアムステルダムの人らしい回答だなと、感じます。今後アムステルダムが、どのような街になっていくのかこれからも注目していきます。

これからは、出張もサステナブルに!次の出張から実践できる取り組みとは

これからは、出張もサステナブルに!次の出張から実践できる取り組みとは

国際エネルギー機関 IEAのTransport(輸送)に関する分析データによると、2021年に世界で排出された二酸化炭素のうち、「移動や輸送」部門は全体の37%を占めています。移動や輸送には、貨物の輸送、旅行や出張による移動も含まれています。出張の場合、移動を伴う場合がほとんどです。欧米では、出張もサステナブルに変えようという動きが活発化しています。 目次 脱炭素に向けた世界の流れ 政府による移動制限が緩和され、ビジネス出張が増えてきました。しかし、出張の回数が、新型コロナウイルスの感染拡大以前と同じ水準まで戻ることは無いと予想されています。 Morning Consultのデータによると、新型コロナウイルスの感染拡大前に頻繁に出張していたビジネスマン・ウーマンで、「今後は出張したくない」と回答した人の割合は、2021年10月の時点で39%。2022年2月には、42%と割合は上がっています。 zoomやGoogle Meet などのオンラインコミュニケーションツールは便利ですが、対面で話し合うことは、ミスコミュニケーションを無くし、個人的な交流を深めることにも繋がります。出張で現地へ出向き、対面でコミュニケーションを行うことは、企業が取引先やビジネスパートナーと長期的なパートナーシップを築き、信頼関係を構築する上で重要でしょう。対面のミーティングの価値が再認識されていますが、企業は脱炭素推進を行う場合、中・長距離の移動がある出張回数をどのように管理していくか、悩ましいところです。 出張時にできるサステナブルなアクションとは 出張によって、滞在期間や移動距離は様々です。出張時に共通して取り組めるサステナブルなアクションとは何でしょうか? 私が出張時に取り組んでいることをいくつか紹介します。 個人でできること ①マイボトルを持参 旅行や出張時は、使い捨てのペットボトルを利用した方が便利です。マイボトルを持参しても給水スポットが無い場合、荷物になってしまうからです。しかし、最近は、日本国内であれば、mymizuアプリを利用することで、給水スポットを簡単に探すことができます。 また、ミーティングや会議の際に、ペットボトルの水やお茶が配られる場合があります。マイボトルを持参し、断ることでゴミの削減にも繋がります。 ②シェアやレンタルを通じて荷物を軽減 飛行機に限らず、電車やバスを利用する際は、荷物を軽くすることで、燃費が改善し、温室効果ガスの排出削減に繋がります。必要最低限の荷物だけを持参し、嵩張る衣類などは、現地でレンタルすることもおすすめです。また、歯ブラシや櫛といったアメニティは、一度使用すると捨てられてしまうため、そもそも使用しないことが重要です。自分自身が必要なアメニティを持参することで、ゴミを削減することができます。レンタルできる商品を事前に把握し、不要なものを持参しないことで、荷物の重さ軽減にも繋がります。 ③部屋の清掃を断る 連泊の場合、部屋の清掃を断りましょう。一部のビジネスホテルは、お部屋の清掃が連泊期間中に一度のみ対応しています。あるホテルに宿泊した時、一度しか使用していないアメニティが、全て新品になっていたことがあります。私は、それを防ぐために、部屋のメモを活用します。「水は要りません」や「バスタオルだけ交換をお願いします」とメモに書いておくことで、必要最低限の清掃をお願いしています。 企業として取り組めること 出張には、移動や宿泊、現地での移動といった、温室効果ガスの排出ポイントがいくつかあります。役員と従業員がビジネス出張に行く場合、企業はどのような取り組みが出来るのでしょうか? ①移動手段 欧州には、「飛び恥(Flight Shame)」という言葉があります。「飛び恥」とは、「多くの二酸化炭素を排出する飛行機に乗ることは、恥ずかしい」という意味です。最近は、フライトを検索すると、スマートフォンやパソコンの画面に複数のフライトを比較して、二酸化炭素を何%削減できるかが表示されます。環境負荷の小さいフライトを選ぶことも重要です。また、温室効果ガスの排出量が多いフライトではなく、鉄道の利用を促すことも出来るでしょう。企業は、役員や従業員が出張する際、環境に配慮した行動を促すインセンティブを設計することで、企業全体の行動変容を実現出来る可能性があります。 ②宿泊先 大手宿泊予約サイトBooking.comは、再生可能エネルギーを導入している宿泊施設や使い捨てのプラスチックを使用していない宿泊施設に対して、「Travel Sustainable」の認証を与えています。Booking.com経由で宿泊を予約しない場合、企業は出張する役員と従業員に対し、Green Keyなどのサステナブルトラベルの第三者認証を取得した宿泊施設を選ぶよう伝えることで、環境負荷を低減を実施することができます。 ③基準づくり リモート会議は、場所を選ばないため、長距離の移動を伴いません。つまり、移動で排出される温室効果ガスの排出を削減することができます。出張には、移動が伴います。しかし、相手と直接会うことは、意識やビジョンをより細かく伝えることができるため、コミュニケーションのミスを無くすことができます。企業は、出張による環境負荷を測定し、出張へ行くのか、リモートで会議を行うのかを決める基準を設けることで、従業員は判断をしやすくなります。 社会全体の取り組みが必要 2023年3月、東京のビジネスホテルに宿泊した際、このようなメッセージが貼られていました。 環境に配慮しようと訴えるメッセージは、環境への意識が高いオランダやドイツのホテルでも発見することができます。 詳しくは、こちらの記事で紹介しています▼ 役員と従業員一人一人が、環境に対する意識を変えることは重要です。だからこそ、企業は、彼ら、彼女らが環境に配慮するインセンティブを設けるなど、社内制度を整えることで、出張を環境負荷が小さいものに変えていけるでしょう。 ただし、企業が役員と従業員に環境に配慮するよう求めても、サステナブルな選択肢がなければ、検討、実践することは出来ません。宿泊施設や航空会社が環境へより配慮し、温室効果ガスの排出量が比較的少ない移動方法や宿泊施設の選択肢が増えることが重要です。 最後に サステナブルツーリズムやサステナブルファッションなど、「サステナブルな〇〇」という言葉を耳にする機会が増えています。出張は、企業活動の一部であり、サステナブルな出張を実践することは、事業全体で排出される温室効果ガスの排出量削減にも繋がります。 私も出張へ行くことが多いですが、個人でできることを引き続き実践していきます。また、出張だけでなく、観光をする際にも、サステナブルなホテルや移動手段を事前にリサーチし、積極的に利用していきます。

環境に配慮した宿泊施設を目指す|グリーンキー認証とは

環境に配慮した宿泊施設を目指す|グリーンキー認証とは

国際的なサステナブル認証であるGreen Key(以下、グリーンキー)をご存じでしょうか?グリーンキーの取得は、環境に対する取り組みだけでなく、サービスの質の向上やブランド力の強化に繋がります。また、同認証は、観光業界でサステナブルな認証として高い評価を得ており、2023年時点で世界で3,700以上、日本国内では4施設が認証を取得しています。 目次 Green Key(グリーンキー)とは グリーンキーは、ホテルやキャンプ場、レストランなどの施設を対象に、環境方針や持続可能な運営を評価している国際的なサステナブル認証機関です。グリーンキーは、1994年にデンマークで始まり、2023年1月現在、世界60ヵ国で合計3,700以上の施設が認証を取得しています。 世界持続可能観光協議会(GSTC)は、GSTC クライテリア(基準)と呼ばれるサステナブルツーリズムのための国際基準を策定し、管理しています。GSTCが認めた第三者機関に向けて発行しているガイドラインでは、観光産業が取り組むべき課題や達成基準を示しており、観光地域向け、旅行会社向け、宿泊施設向けの大きく3種類に分類されます。 GST認証についてはこちら▼ グリーンキーは、GSTCが認めた第三者機関として、2016年に「宿泊施設向けのGSTC承認(GSTC-Recognized Standards for Hotels)」を取得しました。ホテルなどの宿泊施設が、グリーンキー認証を取得すると、GSTCによる国際基準を満たしていることを意味します。 認証取得のメリットと特徴 グリーンキー認証の取得は、サステナビリティへの取り組みが加速するだけでなく、環境に配慮した観光をしたい人々のニーズを満たすことにも繋がります。サステナブルツーリズムが主流になりつつある欧州では、グリーンキー認証が既に旅行者がホテルやレストランを選ぶ際の一つの目安として活用されています。 また、グリーンキーは、世界40ヵ国に専用窓口を設置しています。自国に窓口がある場合、自国の規制や宗教、習慣を考慮しながら母国語での審査やサポートを受けることが可能です。 日本では、一般社団法人JARTAが日本国内のグリーンキー認証に関わる窓口業務を行っています。年会費や審査費用は、施設の規模や業態によって異なります。詳細はJARTAのサイトをご確認ください。 認証の基準とプロセス グリーンキー認証を取得するためのプロセスを解説します。グリーンキー認証の取得プロセスは、1.申請、2.現地調査、3.判定の大きく3つに分けられます。 1.申請認証を取得したい施設は、JARTA窓口に審査書類を送付します。申請書には、施設が行っているサステナビリティに対する取り組み状況や今後の改善案を記載します。 2.現地調査1年目と2年目は、年1回の現地調査にて、書類確認と申請内容に関わる目視検証が実施されます。その後、現地調査は3年に1度、書類確認は年に1度行われます。 グリーンキーは、対象となる6種類の施設別に評価項目を記載した文書を公開しています。全ての施設に共通している評価項目は13項目あります。 監査役が、現地を視察し、上記の13項目の取り組み状況を定量的に評価します。対象施設は、水やエネルギーの消費量の削減、 廃棄物の排出量の削減、オーガニック商品の活用といった評価項目130項目のうち80以上の項目で基準を満たすことが求められます。 3.判定評価の結果、基準を満たしていると判断された場合、施設からの申請書と現地調査のレポートを、グリーンキーの本部に提出します。しかし、判定はグリーンキーではなく、公平性を保つため、第三者機関(独立監査役または審査員)によって行われます。合格と判断されれば、無事に認証され、盾と認定証が渡されます。ただし、認証の有効期限は1年間のため、継続を希望する場合は、更新手続きを行う必要があります。 グリーンキーを取得した施設の事例紹介 グリーンキーの公式サイトによると、2023年1月現在、日本国内で認証を取得している施設は、4カ所です。各施設の取り組み事例を紹介します。 長野県「扉温泉 明神館」 扉温泉 明神館は、1931年に創業した長野県松本市にある老舗旅館です。使用する食材は、地産地消にこだわり、自家農園で栽培した有機野菜を中心に提供します。また、室内には、空気を浄化するといわれる珪藻土や無垢材のフローリング、リネンにはオーガニック素材を使用しています。 詳しくはこちら▼ 群馬県「別邸 千寿庵」 別邸 千寿庵は、谷川温泉に佇むラグジュアリーな温泉施設です。静かなプライベート空間と個性的な5つの温泉を楽しむことができます。同施設では、月ごとに廃棄量の目標値を定め、食品ロスの削減に積極的に取り組んでいます。 詳しくはこちら▼ 奄美群島「伝泊」 奄美群島でまちづくりに取り組む「伝泊」が運営する4つの宿泊施設のうち、『伝泊』と複合施設『まーぐん広場』の2施設が、Green Key認証を取得しています。伝泊は、奄美の豊かな自然と集落文化をオーバーツーリズムから守ります。また、同施設は、奄美の自然と集落と人に寄り添う宿泊施設の運営を目指しており、コンポストや自社の畑を活用した循環の仕組みや定期的な海岸清掃といった環境への取り組みを行っています。 詳しくはこちら▼ 最後に 日本には、約5.5万の宿泊施設数があるため、もっと多くの宿泊施設がGreen Key認証に興味を持っても良いと感じます。グーグルトラベルや大手旅行サイトExpediaを含むオンライン予約サイトでは、サステナブル認証取得の有無が分かり、欧米を中心に宿泊客にとって宿泊先を予約する際の1つの指標となっています。 日本でも、空港の水際対策が緩和されたことで、訪日外国人の数は回復しつつあります。今後、サステナブルツーリズムに対する意識が高い欧米からの観光客や環境問題や社会問題に対して関心のあるZ世代が日本を訪れます。その時、彼らを誘致するためにも、グリーンキーを含むサステナブル認証を取得することを経営戦略の1つとして検討してみませんか? 関連記事はこちら▼ 参照:https://www.greenkey.global/our-programmehttps://static1.squarespace.com/static/55371f97e4b0fce8c1ee4c69/t/606db30993ab632274af43e0/1617802040492/Green+Key+Brochure+2021.pdf